現場のプライド。

高い送電用鉄塔です。世田谷区成城の住宅地の真ん中に立っています。

川崎と世田谷にかかっているので、川世線とプレートに書いてあります。この鉄塔、高さは約52メートル。鉄塔のかなり高い所で、作業服を着た方が、保守作業をしているのを見たことがあります。

先日、とある電力会社にお勤めの知り合いの方と、この塔の近くを通りかかりました。

「この鉄塔の上で作業している人を見たことがあるんですけど、関連会社の人とかですか」「うちの社員です。定期点検で私も昇ったことありますよ」と、いつもよりきっぱりとした口調のお答えでした。

これは意外。本社で企画をしているとお聞きしていましたから、想像もしなかったです。

電柱の下で、系列会社の作業車がとまっているのを見かけますから、そのイメージで聞いたわけですが、「そこは、超重要なところだから、自分たちで保守しないとだめでしょう!」という無言のうちに秘めた現場のプライドの琴線に、触ってしまったようでした。

「そうだったんですか!」と賛嘆。材料からこだわりぬいている手打ち蕎麦屋さんに、「この蕎麦はどこから仕入れてるのですか?」と、大げさに言えばそんな愚問だったのかもしれません。

発電のことにはみんなが目を向けるけれど、実際には電気を運ぶ電線が必要で、それを支える鉄塔や様々な設備がいるし、こわれたら停電してしまうので、点検・保守の手間をかける人員と技術が必要。

電力自由化。確かに電力会社を選べることに、制度としてはなったけれど、送配電の長い長い部分、今のところ、それを担えるのは既存の大手電力しかいない。

原発に固執し、会計上の数字合わせばかりしようとする経営トップ層の意思決定が誤っていても、電気は電気で流れていくし、それを安定的に届ける現場のプライドがある。

しかし、やはり。放射性廃棄物を出さない発電方式、みんなが喜ぶ電気を、その培ってきた技術と経験で、誇りを持ってお届けしていただくのが理想、かな。tepco