稲わらで熟成する手作り納豆その1. 藁苞(わらづと)作り

とある納豆好きのつぶやき

納豆は、庶民の味方。
栄養豊富で、腸内環境も整えてくれる。
値段もリーズナブルでまさに国民食の揺るぎない座を得ている。

納豆で思い出すエピソードは、母がときおり語っていた納豆味噌汁のこと。

子どもを3人産んだ母は、2人目の時に大量出血し、生死の境をさまよったそうだ。
何とか命を取りとめた母に、産科のお医者さんは「これからは毎日、納豆を味噌汁に入れて飲みなさい」と指導した。
納豆味噌汁のせいもあってか、その後めきめきと回復し、私の知る頑健な母が蘇った模様である。

そんな昔話を聞かされながら親しんできた納豆がとても好きで、「納豆があればご飯は大丈夫」と学生の頃から公言していた。

しかし、最近は正直なところ、そこまでうれしそうに断言することが少なくなった。
変わらず毎日のように食べてはいるのだが、いまひとつ熱が込められない。
納豆自体の風味があまり感じられないのだ。

なんというか、今の製品たちに文句のつけようはないのだが、
あの「アンモニア臭いけれど、食べるとおいしい、やめられない」というクセになる味がない。

身体に良いから食べようか、

まるで健康食品みたいなテンションに下がっている。

そんな時に、「手作り納豆のイベントがある」とスタッフが情報をキャッチ。
早速、体験してくることにした。

納豆づくりは
藁苞(わらづと)作りから始まる

会場は東京、港区西麻布にあるワークショップスペース、EAST-WORKS
倉庫のような建物に入ると、渋い暗めの照明の中、フローリングに山積みになった
稲わらの山を、遠巻きに見ている参加者たち。

少し、奇妙な光景。
稲わら納豆と、ドライな西麻布の空間のミスマッチ感にやや困惑する。

開始時間になり、講師の村上さんが柔らかな語りを始める。

村上さんは、料理人、イタリアンレストラン経営等のキャリアを積み、
今は、呑み助のディープゾーン新宿荒木町で「生ハム工房ひだりうま」を経営。

王道の料理を知り尽くした後、発酵食品や伝統食品の良さを最高に引き出すレシピを探求する達人とお見受けした。

ついさっきまでの手持ち無沙汰な空気は一変して、ワクワク、興味津々。
みんなの目が輝きだしている。

稲わらのいい匂いに包まれて、
農家の手仕事を体験

村上さんの実演を見ながら、稲わらを束ねて、
藁苞を作っていく。

使う稲わらは、片手で握れる分量。

束を床にトントンと打って揃え、端から25cmのところを麻ひもでしっかりと結ぶ。

結んだところを、水で湿らせると繊維が柔らかくなって、後で折り曲げやすくなる。

稲わらから立ち昇る、くすんだ甘い匂いが懐かしい。

盆正月に必ず帰省に連れて行ってもらった母の故郷は、東北の米作地帯。
田舎の家は稲作農家で納屋には、稲わらが山積みされ、ロープになったり、
畳の芯材になったりするのだった。

それより以前には、稲わらは、草鞋(わらじ)や、蓑(みの)になっていたのだろう。

たぶん、参加している誰もが、西麻布にいることを忘れて
土着的な何かにどっぷりと浸っていたような気がする。

稲わらのアロマはとても強い力を持っている。
エッセンシャルオイルにしたら、案外うけるかもしれない。

納豆熟成のゆりかご、藁苞(わらづと)が完成!

ワークショップのほとんどの時間はこの稲わら作業の工程なのだが、
これが実に楽しく、参加者の皆さんも、笑い声が増えていく。

とりわけ、たった4本の稲わらを、左右2本ずつに分けて、手で綯う(なう)、
稲わらロープ作りは、難しさと同時に出来上がりの達成感が味わえる一コマ。

なかなか一発ではできないものだが、それでも講師の村上さんは一人ひとりに
ていねいにマンツーマンで、手仕事の愉悦を伝えてくれた。

もう一方の端を結んで「藁苞」(わらづと)が出来上がった。

あとは、EAST WORKSさんがすでに茹でてくれている大豆を中に入れ、
そのゆで汁で浸すだけだ。

いよいよ大豆を入れる!>> 続く