アリサンのフードカーニバル

オーガニック食品専門商社、アリサンのフードカーニバル

“アリサン”…。一風変わった語感の社名だが、オーガニック食品専門の輸入商社の草分けとして、自然食品店オーナーの間では広く知られる会社だ。アリサンは、約20年前の創業以来、こつこつとオーガニック食品の市場を拓き、地道に成長を続けてきた。
品揃えは、栄養豊富なシリアル食品「グラノーラ」をはじめ、穀物コーヒーの「インカ」や有機パスタ、世界中から調達したさまざまな缶詰、瓶詰め食品など幅広いものがあり、年々ラインアップを拡充し続けている。

社長は米国人のジョン・ベリスさん。台湾人である奥様の故郷にある懐かしい山、阿里山(アリサン)からとって社名を名づけた。当初は確固たるビジネスプランがあったわけではなく、自分たちが食べたいオーガニックなグラノーラが日本にはなかったことから、自ら輸入をはじめ、周囲の友人たちにも分けていたのが、今日の専門商社になる端緒だったという。仕入れる商品の基準は、「一緒に仕事をしたい人が作っているかどうか」。すべての商品は、実際に知り合い、信頼できると認められた生産者のものばかりを選りすぐっている。

埼玉県高麗川のほとりにオーガニックな暮らしのよりどころを発見

本社屋は米国人社長の出身地、米国メイン州の農家スタイル

自然豊かな埼玉県日高市、高麗川のほとりにあるアリサン

理創業のきっかけになったグラノーラ。屈抜きのおいしさこそ、オーガニックの証でなければ

アリサンのフードカーニバルは、今年で4回目。世界中から集まるオーガニック食品を実際に試食してもらい、阿里山カフェでの快適な時間を過ごして欲しいという思いからはじめられたという。会場にはスタッフが料理を用意する屋台が並び、パスタやカレー、たこ焼きから、デザートまで、さまざまな味を楽しむことができる。この日も昼過ぎの屋台は大変な賑わいの行列。どれもうまい。“オーガニック”は理屈だけでなく、やっぱりおいしくなくては。

アリサンでは地元生産者の商品も積極的に取り扱っている。同じ埼玉県の弓削多醤油は、有機JAS認証を受けた国産原料使用の醤油を出品。醤油のもろみを目の前で「生しぼり」する実演を見せてくれた。この「生醤油」、舐めてみると、まろやかで実に味わい深い。量産品にはない風味がある。県内で有機農業に取り組む「雨読晴耕村舎」の後藤さんは、バジルソースなど手作りフードを出品。自家畑無農薬栽培のバジル、にんにくとギリシャ製エキストラバージンのオリーブオイル、モンゴル岩塩などで作られたバジルソースは、試食する人から驚きの声があがる本物の手作りのおいしさ。

口コミで人気上昇中のフードカーニバル

   

ウッドデッキのオープンカフェは、川のほとりの緑に囲まれた気持ちのよい空間

オーガニック・バジルソースを出品する「雨読晴耕村舎」の後藤雅浩さん。一級建築士であり、セルフビルドの家づくりでも知られる有機農業の実践者だ

アリサンの拠点、アリサンオーガニックセンターは、食品だけではなくオーガニックな志向や自然と調和した考え方を広め楽しむ場所として、2001年夏に完成した。その建築スタイルは、社長のジョン・ベリスさんの出身地、メイン州あたりによくある農家の様式に則ったものだ。実はこの建物、壁の内部に厚さ10数cmの断熱材がサンドイッチされており、冷暖房効率に非常に優れた省エネ住宅になっている。施工は、アリサン社員をはじめ、知り合いの大工、左官職人など数多くの人の協力を得て行われたという。天井は高く、白い漆喰いの壁は落ち着いた雰囲気の空間をつくりだしている。高麗川のほとりというロケーションともあいまって、その快適さは誰もが気にいるはずだ

ベリス社長自ら、「アリサン社屋ツアー」と題して、省エネ仕様で造られた社屋や敷地を紹介。倉庫の中も、断熱性能の高い建物のおかげで、一年中食品の保管には理想的な状態が保たれている。

カフェの生ゴミは、コンポスト(堆肥)として処理をしている。

自然と調和したライフスタイルの工夫と実践を来訪者に説明するベリス社長

「断熱性能を高めれば、エネルギーを節約でき、人も快適さを享受できる」。建物の案内ツアーを実施してくれたジョン・ベリス社長は語る。実用的なメリットとして、建物の省エネ性能が高いので、商品を保存する冷蔵庫や冷凍庫の性能も優れたものになる。また、カフェの生ゴミはすべて裏庭のコンポスト用スペースで堆肥にしているという。このように、単に健康食品を扱うということだけではなく、住まいを含めた生活全般にわたって、合理的に自然と調和した暮らし方を実現しようというのが、アリサンの理念だといえる。

フードカーニバルの他にも、アリサンオーガニックセンターでは、年間を通してさまざまなイベントが企画されているので、一度訪れる価値があるだろう。