香、汁、飯の朝ごはん。

子育てで、体力的に一番頑張ったな、、と
今にして振り返ると、息子と娘が幼稚園にさしかかる頃だったと思う。

朝ご飯に、大、中、幼児用のお弁当三つ、
園バスに間に合うよう、決まった時間に
二人の子どもの手をとって、玄関をでるのは、
なかなかのスリリングな日々だった。

同じマンションには、だいぶ年下だけれど、
同じ年頃のこども三人、
週一で和服をキリッと着付け、お茶のお稽古に通うママがいた。
秋も深まる頃になると、その優雅さはさらに深まる。

「実家の長野からリンゴがたくさん送られてきたので、アップルパイを作りました、召し上がってね」

香しい焼きリンゴの匂いに包まれて、ホールを差し出してくれる彼女は、
”ミス長野りんご”のたすきをまとっているかのごとく、
神々しかった。

「どんな朝ごはんを作っているの?」

「こどもたちが、食べやすいようにおにぎりにして、
あとは、具沢山のお味噌汁よ」

(えっ、それだけ?おかずは、、?)

心中を見透かされたように
続けて彼女は、

「たっぷりの野菜と味噌とご飯で、栄養バランスも良いし、十分だと思ってるよ」

ここ数年になって、そんなやりとりをしたことを、
献立探しの時に反芻するようになった。

最近、とても訪れたいなと思っている飛騨高山の名物は、
飛騨牛、りんご、朴葉みそと並んで、
”漬物ステーキ”なるものが王道だと知った。

北アルプスに囲まれた飛騨地方の冬は厳しく、
ずっとむかしから、毎朝お母さんは凍った白菜漬けを樽から取り出し、

それを鉄のフライパンでジュジューと焼き、
卵でとじ、かつおぶしをふりかけて出来上がり。

”漬物ステーキ”は、この地方の食卓でひときわ存在感を放っていたようだ。

こどもたちも大きくなって、朝の時間もずいぶん余裕ができた。

”漬物ステーキ”にはまだチャレンジしていないけれど、

飛騨高山の美しい土地で自然栽培で育った野菜たちの、

無添加で熟成されたお漬物を、ご飯の最初と最後に、じんわりとかみしめる味、

(今朝は冷えているから、山芋、カボチャ、豚肉、大根、それに、キャベツいれようかな、、)

と、玄米麹お味噌汁(出汁がなくても十分に美味しい)の中身を思い浮かべながら起床する。

写真の漬物「飛騨高山よしま農園」>>