イラスト/大塚砂織

井口和泉の暮らしとごはん vol.1 牡蠣のオリーブオイル漬け

1

vol.

牡蠣のオリーブオイル漬け

2012.11.28 up

炭の香りで思い出す「牡蠣」の季節

炭の香りがただよい始めると、牡蠣のおいしい季節になったのだと心が弾む。 このつながりを覚えたのがいつころからなのかはよく覚えていないけれど、町の中にひっそりと佇む一軒家の西洋料理のお店の暖炉で、山の中のお店の薪ストーブで、あるいは友達の家の火鉢の中で、思いがけず出会う燃えた炭のふわっと鼻の奥を抜ける温かい香り。冬の到来を教えてくれる。牡蠣の季節です。牡蠣もまた香りの豊かなたべものだ。新鮮で量感のある身をつるりといただくと、潮の香が口中に広がる。まるで小さな海を食べているようで、美味しい、という以上に体がよろこんでいるような気がして、人の体も海の成分と同じくできている、という話を思い出す。

ひと手間をかけて旨味を引き出す「牡蠣のオイル漬け」

生でいただく喜びはこれほどに無上のものだけれど、牡蠣は、環境が汚染されていればすぐに影響を受けて身体に毒を持ちます。毒を持つというより、環境汚染を緩和する働きを持っていると言ってもいいでしょう。私たちがふだん食べている生牡蠣は、紫外線殺菌を受けた海水を循環させて無菌状態にした「生食用」と呼ばれるものです。海をきれいにしてくれる牡蠣は、どれほど新鮮であっても汚染されていれば、人間が食べれば中毒を起こすのです。それも毒出しの自浄作用ではあるのだけれど、安全にいただくためには、やはり火を通して口福を愉しみましょう。火を通すことで味わいにふっくらと明るさと濃厚さが加わる。炭の香りで牡蠣を連想するように炭火で殻ごと蒸し焼きにしたものはもちろん、手間をかけてオイル漬けにしたものもまた格別です。

大根おろしで汚れを落とし、熱湯に通して乾煎りする

牡蠣を洗うときはなるべく大根おろしを用いる。大根おろしをボウルに入れ、そこに牡蠣を入れて静かに洗う。あまりに汚れがひどい場合は、2~3回おろしを替える。大根おろしを使う理由は、大根の酵素が作用してアクがとれ、また、いやなえぐみや生臭さも消えること、ヒダの間の細かい汚れもきれいに取り除けるからです。実際にしてみると、真っ白な大根おろしが牡蠣のアクや汚れで真っ黒になり、牡蠣の汚れにおどろくほどです。なければ塩水を替えながら数回丁寧に洗います。

牡蠣が“つるぴかぷりぷり”になったら、清酒と塩を溶かした水で振り洗いして大根おろしを落とし、熱湯にさっと通す。余計な水気を拭き取り、フライパンをしっかり熱して牡蠣を入れ、転がすように乾煎りします。乾煎りをしっかりすると長期保存が可能になりますが、身が縮んでしまうので、様子を見ながら適度にふっくらしたところで火を止める。

ハーブ、にんにくと一緒にオリーブオイルに漬け込んだら完成

保存容器に、牡蠣、にんにくの薄切り、ローリエ、ローズマリー、オリーブオイルをかぶるほどに注いで冷蔵庫に入れる。これは基本の組み合わせですが、もしも夏に作ったドライトマトがお手元にあればそちらも一緒に漬け込んで下さい。牡蠣とトマトがお互いに旨味をさらに引き出し合います。半日ほど寝かせたら食べられます。美味しいのは3日後から。作り置きすることで味を含み、時間が旨味を育ててくれるのもまたうれしい。

冷蔵庫でなら1ヶ月ほど保存も可能なので、これからの季節ならクリスマスやお正月のおつまみにも活躍します。煮沸消毒した小瓶に小分けして贈り物にも。いただくときは温めなおして、そのままシンプルな一皿に。その他、サラダに加えたりオムレツに入れたり、ピラフやパスタにするのもおすすめです。味を調える際に、すこーしお醤油をさすとご年配の方にも喜ばれます。

私がこの冬したいのは、バゲットと牡蠣のオイル漬けと、アラジンの赤い魔法瓶にホットワインを入れて、備長炭ではないけれど、松ぼっくりで火をつける小さな野外ストーブで暖をとりつつ、晴れた冬の浜辺でのピクニックです。もちろんバゲットはストーブで焼いて、炭の香りも愉しむつもり。

材料牡蠣のオリーブオイル漬け 2人分

生牡蠣 150g
大根おろし 約2カップ
塩、清酒 少々
にんにく 1片
ローリエ 1~2枚
ローズマリー 1枝
エキストラバージン
オリーブオイル
適量(ひたひた)
サンドライトマト 8枚
好みで、赤唐辛子1本(種を抜いて)

ガイドプロフィール

井口和泉

料理家。福岡県在住。野菜やハーブ、庭から摘んだハーブや野草を使った料理が得意。不定期開催の少人数での自宅での料理教室の他、メディアや企業へのレシピ製作&監修、商品開発のコンセプトワークなど、さまざまな「おいしい」に関わっています。
趣味のひとつは四季折々の保存食作り。畑は2年目。

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