いきなりコーヒーパラダイス! from ロンドン(その2)

コーヒーマニアの世界は深すぎて、近寄るのをためらっていた。

「なんだか面倒そう」
「そこまで、しなくても」
「昭和のおじさんの趣味っぽい」
「お金もかかりそう」

しかし、その手間で得られるインパクト、
「香り」「フレッシュな味」「高揚感」、知らなかった世界のひろがりを体験すると・・・。

「1回目のお湯は蒸らす時間をしっかり30秒以上ね」
「豆から挽くと違うぞ!」
「ちゃんと豆とお湯の量を計ろう」

なんて、誰にも言われないのに、ステップを上がっていく自分。
「旨さ」×「高揚感」という快感に突き動かされると、人間はどんなことでもできそうだ。

「まあ、高級ワインよりは安いし」
「もっといい豆ないかな~」
「生豆を買って自分で焙煎したらもっと安く新鮮に飲めるかも」

などと欲望は止まりそうもない。

そこまで私を虜にしたロンドンコーヒーのパラダイス体験。
備忘録をもう少し続けよう。

MONMOUTH COFFEE COMPANY

モンマスコーヒー。いつも行列とのこと。
茶封筒のようなベーシックな紙の袋に、豆ごとにカラフルな色が割り振られている。
いただいた商品の水色は、
Raja Batak, INDONESIA
Lake Toba, North Sumatra
製法は、Honey Process と書いてある。
なんでも、ウォッシュドとナチュラルの中間の方法だそうで、
水に漬けて一番外側の皮だけ取り除いて、ヌメリが残ったまま乾燥、
その後、生豆にするらしい。

製法の話しは、いくらネットの記事で読んでもピンとこない。

実際に現場を見るまでは何も知らないのと同じだと思うが、
まあ、豆選びのちょっとした参考に。

コクがしっかりしてバランスがよく、いつも近所で買っているお気に入りコーヒーと近い。味わいにハーモニーが感じられるのは鮮度がいいからだろう。

鮮度が命!サードウェーブコーヒーたちを飲むと、
まるでコーラス演奏みたいに、低音部から高域部まで、味、香りの重奏的なハーモニーを感じる。

「賞味期限は6ヵ月」と長めで売っている豆と比べると、
同じ音程で声を揃えて歌唱しているジャパニーズアイドルグループと、
各パートでからみあいながら透明感のある声が重なりあうエストニア合唱団との違いというか。

モンマスコーヒーもそうなのだが、
本物を追求するサードウェーブコーヒーの店では、
生産者の顔が見える、収穫量の限られたコーヒー豆になるので、
商品の入れ替わりが早い。

栽培地名まで表記する彼らの姿勢と比べると、
今まで「ブラジル」とか「グアテマラ」とか、
国名だけで呼んでいたのは、

お米のブランド名を、「ひとめぼれ」「あきたこまち」ではなくて、
「日本」「台湾」とか表現するようなものだ。

DEPARTMENT OF COFFEE AND SOCIAL AFFAIRS(左)

Eastern Promise
産地はコロンビア。海抜1800~1950 mの高地で栽培されている。
品種は、Caturra, Colombia
製法は、Washed。
テイストノートは、Raspberry, Milk Chocolate, Honeycomb 。

クリアな味。ウォッシュドとナチュラルの製法の違いがわかる。
奔放なアロマはないけれど、正統派のコーヒーというきちんとした味がする。
酸味が強いので、ミルクを入れると合うだろう。

SQUARE MILE COFFEE ROASTERS(右)

HERBAZU, COSTA RICA
産地はコスタリカ。
製法は、Honey。
テイストノートは、Apple Pie, Hazelnut, Silky.

栽培者は、コーヒー豆のブラインドコンテストで評価が高い。
たしかにアップルのような透明感のある酸味。

DEPARTMENT OF COFFEE AND SOCIAL AFFAIRSのシンプルな店内。

おいしそうなペストリー。
内装は、ファッションブランド、マーガレット・ハウエルのテイストみたいに、
英国シンプルデザイン。

COLONNA

COLONNAは、ネスプレッソで使えるカプセルコーヒーを自社商品にして、
鮮度の高いエスプレッソやレギュラーコーヒーを楽しめるよう力をいれている。

いただいたのは、
Honduras
マラゴジッペという品種の豆。ウォッシュド。
テイストノートは、Apple acidity, orange, honeydew melon, milk chocolate.

すっきりした酸味と滑らかな舌触り。端正な美しい味。

コーヒーは自分の熱意工夫しだいで、
受動的にお仕着せのものを飲んでいる時とは
まったく違うおいしさを手にいれることができる。

なんでもかんでも管理され、
システマチックに決められてしまっている世の中にあって、
自分の手でコントロールできる範囲を取り戻すことは、
とても充実感を与えてくれる。

その反対に、コーヒーへの嗜好は、
けっこう伸縮自在でもあるとも思う。

もともと、地球の反対側から届けられるコーヒーは、
存在自体が貴重なものだ。

コーヒーへの郷愁は、ロッテのコーヒーガムの香ばしい甘さからはじまり(個人的な記憶)、
サードウェーブコーヒーで、
生鮮食品なみのフレッシュな味を知るところまで幅が広がってしまった。

しかし、もしも天変地異や非常時になって、鮮度のよいコーヒー豆が入手できず、
香りも乏しく、風味のなまったコーヒーしか飲めなかったとしても。

その一杯に、コーヒーが生えていた土壌の匂いを想像でたぐりよせ、
平板な苦みと酸味を、「おお、コーヒーの味がする」と喜び、

小さな幸せを噛みしめることは、
いつになってもできそうな気がする。