無農薬有機茶一筋の40年。
「人と農・自然をつなぐ会」

1976年。「無農薬で安全なお茶を作ってほしい」というひとりの消費者の声から、静岡県藤枝で農業を営む杵塚敏明さんの無農薬茶づくりの挑戦は始まりました。立ち上げの苦労を乗り越え、無農薬茶づくりを確立した業績は農業界で高く評価されています。若い世代も農園経営に加わり、無農薬有機栽培のこだわりは、みかん、米、小麦、梅など生産物全てとひろがりを見せています。

杵塚 敏明さん

人と農・自然をつなぐ会 代表

1943(昭和18)年生まれ。1976年から無農薬有機栽培のお茶づくりを手掛ける。お茶の購入会員と共に無農薬茶の生産を順調に伸ばし、荒茶加工から完成品まで一貫製造できる体制を確立。和紅茶づくりも本格展開している。日本農業賞「食の架け橋の部」優秀賞(2015)、中日農業賞優秀賞(2012)。「食の問題がグローバル化してきたこと、政治の流れによって安心・安全とは全く逆方向に進んでしまうこと、1つ1つの問題と向き合い、声を上げ、行動していくことが大事だという思いを強くしています」(「2016年 新茶便り」会報誌より抜粋) 

「無農薬で安全なお茶をつくってほしい」

「農薬を使っていないお茶を飲みたい。あなたが作ってくれませんか」生協の牛乳配達で顔を合わせる主婦のひとりから、杵塚敏明さんが真剣なまなざしで訴えられたのは1976年のこと。杵塚さんは以前から、村の中で農薬や、除草剤、化学肥料の使用量を減らし、自然と人にやさしい農業をしようと提案していました。無農薬茶を求める消費者の切実な声を聞いた杵塚さんは、我が意得たりと決心し、生産者と消費者が一緒になって安心・安全なお茶を作る「無農薬茶の会」を発足しました。生産者4名、消費者40名での出発でした。

お茶の木(ツバキ科)には害虫がつきやすいため、農薬散布が必要であると一般的には認識されています。現在でも国内の緑茶の流通量のうち、無農薬のお茶はわずか3%程度にすぎないそうです。杵塚さんのお茶畑は、初年度こそ失敗したものの、様々な試行錯誤の末、スタートから数年後には立派な茶葉を得られるようになり、無農薬茶の生産を軌道に乗せました。

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無農薬の茶畑は、生態系のバランスが取れている。

杵塚さんが無農薬のお茶栽培に成功したことが知られるようになると、大学の研究者が、害虫の発生状況の実態調査をしたいと連絡してきました。調査結果によると、無農薬の畑は、確かに害虫も一定の割合で生息しているが、その数は、茶の木に大きな被害を与えるほどではない。それに対し、農薬散布を行っている茶畑は、散布直後こそ害虫は壊滅しますが、一定期間を過ぎると急激なカーブを描いて害虫は激増し、農薬散布を繰り返す結果を招いていました。

農薬を散布している畑には、害虫を食べるその他の益虫や小動物もいなくなってしまう。杵塚の畑には、多様な生き物が生息し、たがいに絶妙なバランスを保つ働きを持っていたのです。茶葉を食べ尽くす蛾の一種、チャハマキには、ドロバチという天敵がいますが、杵塚さんは、ドロバチの巣となる竹筒を畑に設置するなどの工夫をこらしました。クモも多数生息しているので、さまざまな虫を捕食してくれます。

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消費者、見学者との交流・体験も行い、開かれた農園をつくる。

お茶の無農薬栽培は決して楽なことではありませんが、草取り、土づくり、害虫、病気対策の工夫など不断の努力を行うことで、杵塚さんのお茶の売れ行きは順調に伸び、生産者仲間も増えていきました。購入会員である消費者との直接のつながりから生まれた会ということもあり、杵塚さんは「お茶摘み交流会」と名づけた1泊2日の体験企画を毎年一番茶の収穫期に実施し、長年にわたって人気を集めています。また、Woofと呼ばれる世界的に知られる農業実習体験プログラムも使い農業インターン生を積極的に受け入れるなど、開かれた農園づくりを目指しています。

杵塚農園はいま、後継者にも恵まれ「人と農・自然をつなぐ会」として、第2のステージを迎えています。2015年には日本農業賞「食の架け橋の部」優秀賞を受賞、農業者と消費者との連携や地域活性のモデルとして注目を集めました。息子さん夫婦が経営に参加し、梅干し、梅酢、味噌、無農薬みかん、みかんジュースの製造販売、米、小麦の有機栽培など、良心的な手作りのメニューが広がりつつあります。

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人と農・自然をつなぐ会

同会では、開かれた農園として、都市生活者、就農希望者との交流、受け入れ企画を意欲的に行っています。2015年日本農業賞「食の架け橋の部」優秀賞の受賞では、農業者と都市生活者、消費者との「新しい連携」や「未来への豊かな生き方・地域づくり」へのヒントとなる活動成果が認められました。

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