Chapter 01
世代を超えて心を揺さぶる 東城百合子の問いかけ
「一粒の米だって、お天道さまが照ってくれて育つのだよ」
ペンネーム東城百合子こと五来百合子は、大正14(1925)年、岩手県葛巻村に7人兄弟4人目の次女として生まれた。父、勝正一は電気技師だったが、請われて村長を務めたという。宮沢賢治もこよなく愛した岩手県の豊かな大自然は、東城の心のふるさとだ。
生後1年もしないうちに原因不明のアクシデントで股関節に障害を負ってしまう。以来、びっこを引くからだである。ハンディを背負った娘の将来を案じて、母親のきよは、百合子が強く生きていけるよう厳しく躾けた。食事の前は、必ず掃除か家事をするのが日課だ。
父は「足に障害があっても、心に障害があってはならぬ。必ず人のために生きる道を歩みなさい」と諭した。学校までの2kmの道のりを、吹雪の激しい日も通った。
「一粒のお米を残しても行儀が悪い。残さないできれいに食べよ。汁物も手に持って周りを汚さないように」
幼い百合子がある日、満腹になったので、何気なく残ったご飯を捨てると、それを見た母は、「一粒の米だって、お天道さまが照ってくれて雨が降って、お百姓さんが汗してやっと育つのだよ」と涙ながらに叱ったという。