ヨモギは人にも植物にも心強い味方
ヨモギというとつい和菓子を連想する。草餅、ヨモギ団子、柏餅。餡と餅、そこにヨモギの香ばしさ、懐かしくそして飽きのこないおいしさ。
このヨモギという植物は生命力が強く、世界中ほとんどどこにでも生えているそうだ。
最近驚いたのは、ヨモギを使った薬草飲料をマダガスカル政府が「新型コロナウイルスの予防や治療薬になる」として推奨したというニュースだ。
世界保健機関(WHO)は「効果は証明されていない」として注意したという。
切実な脅威であるコロナ対策の話題なので、効果がありそうとは決して書く気は起きないが、悪いはずはないと思う。日頃からの体質強化にはよいかもしれない。
ヨモギは、人間にとって有益なことはもちろん、植物を元気にするためにも役立つ。その方法は、ヨモギの葉を採取して発酵させ、その発酵液を薄めて植物に与えることだ。
ヨモギで天恵緑汁を作ってみる
天恵緑汁とは、野草を採取して発酵させ、その発酵液を薄めて植物や畑に散布して使う、いわゆる自然農薬のひとつだ。
「現代農業」という自然農業志向の農家さん向け専門誌がある。農家経営をしっかり成立させながら、健康、安心な農業をめざすためのヒントを発信、啓蒙し続けてきた素晴らしい出版社、農文協から出ている雑誌だ。
その農文協が出している『土着微生物を活かす』(趙漢珪著)というベストセラーの本の冒頭に登場するのが、この天恵緑汁。
これを読んで“いつかこの天恵緑汁を作ろう”と決めていたが、その思いはずいぶん前に講習会で実践した”野草を使った酵素づくり”で遂げられたので、しばらくの間、天恵緑汁のことは忘れていた。
ここにきて、家の植物を元気にしたいということが関心事になっていることもあって、再び天恵緑汁を作ってみることにした。
春から初夏の旬の野草がそのまま材料に
作り方はいたって簡単。広大な畑をやっているわけでもないので、何キロも野草を採取する必要もない。思いついたとある5月の朝、1時間程度でヨモギを中心にスギナ、ドクダミを混ぜて1kgほどの野草をビニール袋に集めた。
趙漢珪さん著の『土着微生物を活かす』に記された作り方を要約すると、次のようになる。
材料
・ヨモギを中心にスギナ、ドクダミ、オオバコなどの野草
・黒砂糖 (上記材料の1/3~1/2の重量)
器材
- かめ、漬け物瓶などの保存容器
(保存時は直射日光を当てない)
- 重し
集めたヨモギ等の野草を刻んでかめに入れる。黒砂糖とよく混ぜて、漬け物石や代わりになる重しを載せて、和紙でフタをする。
仕込む量によっては、野草を敷いてから黒砂糖、また野草を入れて黒砂糖、と交互にサンドイッチ状にすると混ぜるのがラクになるかもしれない。野草酵素づくりでは、大型容器で作るので野草と白砂糖のサンドイッチ方式だった。
気温20℃程度なら、5日から7日で出来上がり
今回は採取した量が少なかったせいか、漬け込んで数日間は発酵の気配がしなかったが、1週間もするとエステル臭というか、甘い匂いが漂ってきた。
趙さんの文章では、発酵直後の勢いのある液をすぐ利用するのがベストだという。
しかし、頃合いがよくわからないので2週間ほど経過してから、ヨモギ他の野草を取り除きカラメル色の液体をペットボトルに移す。
野草の固まりは、細かく刻んでコンポストに混ぜたり、畑の地面に漉き込んだりした。
500倍に薄め、葉面散布で植物にヨモギパワーを注ぐ
できあがった天恵緑汁は500倍から1000倍に薄めて、葉面散布で植物に与える。葉面散布(ようめんさんぷ)は、葉から直接に微量栄養素、有効成分を吸収させる方法だ。
植物は根からの栄養吸収を主な供給源として生長するのだが、葉の表面からも微量な栄養素を取り込むので、即効性があるという。
500倍から1000倍というと、ずいぶんと薄いようにも感じるが、植物の葉面の細胞にとっては大変な量の物質を吸収することになるので、濃度が濃すぎると葉が痛んだり、さらに生育不良をきたすので注意が必要だという。
散布する時間帯は、朝、夕方がよい。
今回のために、ホームセンターで購入した新兵器、2l入りの噴霧器が登場。
2000ccに対して500倍なので、4㏄程度の天恵緑汁原液で十分。これをポンプを数十回押して噴霧器内部の圧力を高めてボタンを押すと、気持ちのよいほど細かい霧状になって液体が拡散、噴霧される。
ヨモギ、スギナ、ドクダミエキスを浴びた植物たちは、気のせいかうれしそうだ。
もちろん思い込みだとは承知しているが、数日後、数週間後の元気な植物たちの姿に期待。
何もしないで、なんだか元気がないなあと嘆くよりも精神衛生上、大変によい感じです。
参考資料
『土着微生物を活かす』趙漢珪著 農文協刊
『自然農薬のつくり方と使い方』農文協編 農文協刊
『オーガニックガーデンのすすめ』曳地トシ 曳地義治著 創森社刊