新型コロナウイルス関連:ピックアップ (5月26日)

“草の根の人々が自分たちの社会的責任感で行動を変えた”

5月25日、新型コロナウイルスの感染拡大に対する緊急事態宣言が全国で解除された。すでに政府発表よりも前の日曜日には街の人出も増えており、飲食店に少しずつ人が戻っている光景は気分を軽やかにしてくれた。

東京在住で、ニューヨーク・タイムスやウォールストリート・ジャーナルに寄稿している米国人ジャーナリストのマーチン・ファクラー氏は、25日Twitterの投稿で「日本の相対的な成功は、(中略)国家のリーダーシップによるものではなく、もっと草の根のごく普通の日本人が自分たちの社会的責任感にもとづいて行動した結果だと思います」と述べた。

前回のブログをアップした際に念頭においたのは「深刻な危機のさなかにあるニューヨークと同様の事態が東京でも起きる可能性」であり、それまでには2週間ほどしかないのだと警告する専門家の意見だったが、東京では冷凍コンテナに亡くなった方の遺体を収容するまでの悲惨なピークは避けられた。

真摯に感染爆発を警告し、「ステイホーム」を呼び掛けてくれた心ある専門家、研究者たちにあらためて敬意と感謝の念を表したい。

免疫力という精妙で強力な守護神

いっぽうで、なぜ感染学研究者たちの悲観的なシミュレーションははずれたのだろうか。この理由について阪大名誉教授で免疫学の権威である宮坂昌之教授が答えている。(引用文は要約)

「イギリスの政府首席科学顧問パトリック・ヴァランス氏は、この新型コロナウイルスに対してまったく免疫を持たないと、社会の6、7割の人が感染する可能性があると言いました」

「しかし、人口約1000万の中国・武漢市で感染したのは、公称10万人弱で、100人に1人程度しか感染せず、もし公称の数字が誤りで実際はこの10倍だったとしても、感染したのは10人に1人程度、つまり最大10%ぐらいの人しか感染しなかったのです」

「免疫学的には、病原体の防御には、自然免疫機構と獲得免疫機構が必要」

自然免疫とは、白血球や食細胞など即座に異物排除に動く免疫のこと、獲得免疫とはワクチン接種後や感染後に学習・記憶されて、特定の異物を排除する免疫だ。

「そして、自然免疫機構が十分に強ければ、獲得免疫のお世話にならずに自然免疫機構のみでウイルスを追い出してしまう人もいるはずです」

「実際、人口約1000万人の武漢で感染者が10万人程度、たとえこの10倍いたとしても100万人、つまり10人に9人以上は感染しなかったと考えられます」

「これが、まったくウイルスに触れなかったためだけとは考えにくく、かなりの人たちが実際は何らかの抵抗力をもっていたために発症しなかったのだと私は考えています」

(引用)『新型コロナにかからないための五カ条 免疫学の大家がお教えします』木村正人 在英国際ジャーナリスト

統計数字の向こうにいる一人ひとりの人間

欧米諸国との比較をすると日本での死亡者数は少ないが、当初呼びかけられた“自宅療養”の期間中に症状が悪化した人の数は把握できておらず、感染の勢いは弱まったとはいえ、現在も集中治療室で人工呼吸器につながれている人に医療関係者が長期にわたるストレスに耐えて治療にあたっている。

日本の感染状況、回復者と重症者、死亡者数については、PCR検査が広範囲に行われなかったことから、全体像を合理的に知ることができていない。ノーベル賞科学者の山中教授が直近でも「東京は検査数が少ないためコメントできない」と述べたほどだ。昨年の死亡者数と最新データの差分である超過死亡数がコロナ原因ではないかと指摘する声もあり、今後の検証が待たれる。統計的数字を見る際には、そこに一人ひとりの生身の人間がいることを忘れないようにしたい。

新型コロナウイルス第2波に備える技

社会・経済活動の再開が段階的に進む中で、これから個人的取り組みができることは何だろう。それは大きく3つの「技」を身につけることではないか。

その1.  ウイルスとの接触量(暴露量)をできるだけ減らす

新型コロナウイルスの感染力は強いが、少しでもウイルスに接したらもうアウトというわけではないらしい。体内に入るウイルスの量によって症状の重さは左右されるので、改めて人混みでのマスク、日常的な手洗い・消毒、着替え洗濯、入浴、居住空間の清掃等で体内へのウイルスの侵入を少しでも減らしたい。基本知識と習慣はもう常識となったので継続が大事ということだ。

その2. 免疫力を高める

新型コロナウイルス感染者のうち、若い世代の多くが無症状から軽症で済み、60代以上の高齢者が重症化しやすいのは、リンパ球などの免疫細胞、免疫物質の量が若い人ほど多く、高齢になるほど減少していることによる。

大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授が一般の人向けに解説している動画「コロナに負けない免疫力をつけるために」によれば、体内に入ったウイルスを攻撃、排除する免疫には、白血球、食細胞などの初動チームと、続いて働きはじめる各種のリンパ球という2段構えがあるという。素人なりの単純な比喩をすれば、ウイルスの軍勢と免疫細胞の軍勢のどちらの数が多いかということは、無症状から軽症の範囲で済むか、重症化にいたるかを決める大きな要因だ。

宮坂昌之教授は免疫力を高めるためには

血流、リンパ液の流れをよくすることが大事だと述べており、

(1)適度に身体を動かす

(2)身体を温める

(3)ストレスをためない

の3点を大切な習慣づけとして著書の中でもあげている。

免疫を高める特効薬的な食べ物、サプリ等については宮坂教授は懐疑的で、あくまでもバランスのよい食事と生活習慣を強調している。

その3. 研究機関、SNS、海外メディアを含めた幅広い情報をつかむ

今回の新型コロナウイルス・パンデミックに関する情報の速さと量、そして質の高い議論をリードしたのは、やはりTwitter、FacebookなどのSNSだった。日頃、国内のテレビ、新聞では取り上げられることのない海外医療機関の科学的データ、論文の要約などを、数多くの研究者、学者らがいち早く評価し社会に向けて発信、共有をはかったことの意義ははかりしれない。

日本の医学研究の層は厚く、次から次へと豊富な知見を持った学界の権威たちがネット上に登場し、しだいに議論の焦点が定まってきたプロセスは実に頼もしいかぎりだった。

また、中国、イタリアにはじまった感染拡大をもっともスピーディにパワーを割いて報じたのがBBC、CNN等の海外ニュースメディアだった。こちらもネットで視聴できる環境ができている。

感染の第2波、3波は必ずやってくると専門家は予測している。基本行動と免疫力アップ、情報のキャッチ、この3つの技を繰り返し身につけるようにしたい。

おすすめリンク

・ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナウイルス感染状況ダッシュボード

Youtube

・コロナに負けない免疫力をつけるために/宮坂昌之氏(大阪大学招聘教授)

 

阪大 宮坂昌之教授へのインタビュー 国際ジャーナリスト 木村正人氏

・一般に信じられている集団免疫理論はどこがおかしいのか免疫の宮坂先生に尋ねてみました(上)

・新型コロナと子供の川崎病や血栓症の関係について免疫の宮坂先生に尋ねてみました(下)

・恐ろしい新型コロナの後遺症「私たち世代のポリオ」「重篤化すると全身に血栓塞栓症広がる」

 

東京大学先端科学技術研究センター 児玉龍彦名誉教授

東京の抗体検査、陽性率は0.6%(500例中 3件)。東京都で約8万人感染と推測。

・東京大学先端科学技術研究センターによる新型コロナウイルスの「抗体検査」について発表会見 プロジェクトリーダー 児玉龍彦名誉教授

・山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信