新型コロナウイルス関連:ピックアップ (4月13日)

次々と寄せられる、科学者たちからの警告

前回紹介した横浜市立大学・佐藤彰洋教授の感染シミュレーションは衝撃を与える内容で、提言する社会的活動の減少目標は、東京都で通常の約2%という非常に厳しいものでした。

その後、政府の緊急事態宣言が発令され、北大・西浦教授による”通常の活動を8割削減”という活動減少目標が示されました。佐藤教授の提言とは大きな開きがあります。刻々と寄せられる科学者たちからの警告の中で、いったいどれが妥当な目安なのでしょうか。

同じ計算式をもとにしながらも、専門家によってアレンジされ、感染者の増加率、回復者の増加率等の変数を加えると試算結果に大きな開きが生じるようです。このことを、神戸大の牧野純一郎教授がまとめて解説してくれています。

 いろいろなモデル計算 (2020/4/10)

(牧野淳一郎教授は、福島第一原発事故の際に客観・中立的な情報発信をしていたことから、筆者が当時からずっとフォローしている方です)

「対岸の火事」ではない

牧野教授は、政府のブレーンである西浦教授が示す“8割の行動削減目標”を、計算としては問題がないが、このまま無条件に鵜呑みはできないとしています。

東京都では2%の行動削減が必要とする佐藤教授の試算については、感染者が退院(人にうつさなくなる)するまでの日数設定等に疑問があり、極端な結論を導いていると評価しています。

しかし、ウイルス根絶をゴールにおいていることと、海外の感染爆発を対岸の火事のように見る風潮の中で、勇気ある警鐘を鳴らした佐藤教授の発言は、一般人の意識を変える大きな意味があったといえるのではないでしょうか。

やはり必要な「外出禁止」レベルの行動制限

牧野教授は、新型コロナウイルスの感染爆発に対する見解を、岩波書店「科学」5月号のコラムでまとめており、予定稿をSNSで公開しています。

「3.11以後の科学リテラシー」に新型コロナウイルスの流行の数理モデルによる現状の理解と必要な対策についての文章

牧野教授の解説から、1人の感染者が回復するまでに何人を感染させるか=R0:基本再生産数が事態収束の鍵を握っていることがうかがわれます。

1人の感染者が何人にウイルス感染させるか=基本再生産数

素人なりに想像してみても、この数値は

・感染者Aさんが、何人の人と接触するか

・Aさんは何日間(または回数)動き回るか

・ウイルス自体の感染力

などによって増減しますが、極端な話しをすれば、Aさんが感染してから回復し、ウイルスを持たない状態になるまでの期間、誰とも接触しなければ、

R0=0 になるはずです。

そこで、現在呼びかけられている「外出自粛」さらに徹底した「外出禁止」=“社会的距離戦略”が世界各国で実行されているわけです。

R0が1よりも少ない数値になれば、ウイルス感染は減少し、やがて収束していきます。

しかし、牧野教授も警告します。

「例えば1.2といった、非常に1に近い値にしても、ピークの感染者は数パーセント、つまり日本の場合、数百万人になる、ということです。」※(牧野淳一郎教授 岩波書店「科学」5月号予定稿)

「R0=1.2の時、最終的には30%以上の人が罹患し、それから『回復』することがわかります。この『回復』には実は志望を含んでいて、その割合は国や年齢にもよりますが1~10%です。1%としても数万人が亡くなるわけで、これはすさまじい数です。」※

牧野教授は、まとめます。

「対応としては本当は外出禁止、すべての学校の休校、すべての企業などへの出勤の禁止

といった、極端な対応が必須になっている、ということになります。」※

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が明らかになってからすでに2カ月。

いまだに、政府は速やかな休業補償を実行しません。

これでは、仕事を休める人はほんの一握りのままです。

警告する科学者たちの声を無視せず、一日も早い対応を実行することが求められています。

出典:牧野淳一郎神戸大教授  いろいろなモデル計算 (2020/4/10);

「3.11以後の科学リテラシー」に新型コロナウイルスの流行の数理モデルによる現状の理解と必要な対策についての文章 岩波書店「科学」5月号予定稿

 

 

ナチュラルクエスト 小林 正廣