カストロのマクロビオティック

キューバといえば、革命と音楽。

チェ・ゲバラの映画なら3つばかり見た。
彼が医学生だった頃の南米放浪の旅を描いた「モーターサイクル・ダイヤリーズ」、
昨年公開された、キューバ革命成功までを再現した「チェ 28歳の革命」(前編)、
そして大昔にテレビで見たタイトルもわからない映画。ボリビアの山中で政府軍に追い詰められる
ゲバラの最後が記憶から失せることがない。
あとのキューバのイメージといえば…。そう、ライ・クーダーが仕組んだブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブでの渋い陰影と開き直った明るさが溶け合った音楽はとても好きだ。
葉巻については残念ながら贅沢すぎて親しんでいない。

代替医療のメッカ?

マザーズオフィスの宮川明子さんが、2度目のキューバ訪問の様子を語ってくれるというので、
「からだの自然塾」に出かけた。今回は、千葉県衛生研究所の佐二木先生の「環境ホルモン」
との2部構成と聞けば、9:30開始もなんのその。
思いを同じくする人は多いらしく、約100名の参加者で満員だ。

宮川明子さんは、ロングインタビューの際も語っていたが、キューバの薬草や代替医療に関心を深めていて、現地の医療関係者と交流を深めている。
1時間半にわたってスライドで見せてもらったのは、有名な観光スポットもあるが、代替医療の研究機関や、マクロビオティックの試食会、現地のハーブ、そしていきいきと暮らすキューバの人々の姿。

印象的だったのは、キューバの医療研究機関で、アロマテラピーやハーブ療法を研究している様子の写真とお話。
キューバは、医療に力を入れており、ワクチンの輸出で外貨獲得を熱心にしているそうだが、宮川さんが訪れた現場はとにかく質素(何もない)環境で、熱心に精油やハーブの分析をしている。日本のように物資があり余っていないので、カルテの紙一枚でも大事に使っている。

注目している薬草としては、”モリンガ”というものがあり、これはミネラルが大変豊富で様々な薬効があるそうだ。グリーンフラスコの林真一郎さんのレクチャーで聞いた話では、南の島は太陽光線が強いので、植物が強力な抗酸化力を獲得しており、それが人間にとっても、大変有用な成分になっているのこと。沖縄、キューバどちらも薬草の宝庫になる条件があるものと思われる。キューバには月桃、イランイラン、ヤグルマ、ヤドリギソウも生えていると宮川さんのお話。

現実は、米国の経済制裁のおかげで医薬品が不足している。
それでも、自助努力で、薬草やアロマテラピーに注目して、医療を充実させようと懸命の努力をしているのだろう。

ハバナで玄米プレートセットはいかが。

筆者が、のけぞるほど驚いたのは、「カストロが玄米の効力に注目して、マクロビオティックを普及させようとした」という話。なんでも、国民全世帯に、玄米ご飯が食べられるように、圧力釜を配布したという。驚きませんか。これ。

もはや引退したとはいえ、カストロという人は、ワンマンでなんでも一声で決まるのでありえない話ではない。

そして、エナジーの塊、宮川明子さんは、滞在中にどうやってかキューバ政府の保健関係の大物と会って仲良くなってしまい、一緒にマクロビ談義に花を咲かせたそうだ。マクロビ試食会のスライドを見た時は、あまりに意外な光景で、口が半開きになった。肉が好きな人もいるだろうけれど、月2回の配給制では、自然、ヴィーガンになるのが成り行きかもしれない。

人口1100万人のキューバは経済面では最貧国水準(平均月給3000円)だが、平均寿命は76歳(革命以前は55歳)で、幼児死亡率は出生1000人あたり5.8人と低い。(キューバ大使館HP)非識字率も先進国並みに低いのは、カストロ政権が国中を回って学習活動を繰り広げたからだ。

しかし、物資がない窮状を宮川さんも語ってくれたとおり、キューバは決してユートピアではないだろう。
それでも、世界のタミフル消費量の80%を使いまくる日本、そして医薬品すらなくとも、何とかしようとするキューバ。
この対照的な2つの国の、ちょうど中間にどんなバランスのとれた未来があるのかと想像を広げることは意味があるような気がする。