プレママ必読の知識、「ビスフェノールA」

マザーズオフィス「からだの自然塾」の続き。「環境ホルモン」について

キューバ報告に続く、午前の部は千葉県衛生研究所の上席研究員である佐二木順子先生による
「環境ホルモン」のレクチャー。「環境ホルモン」は、正しくいうと内分泌撹乱物質といい、
女性ホルモン、男性ホルモンに対して、ごく微量でも多大な影響を与える物質のことだ。

佐二木先生は、この30年来ずっとこれらの物質の実態や影響について研究してきた。
数多くある環境ホルモンの中でも、今回は「ビスフェノールA」という物質の影響について焦点を当てて話をしてくれた。

キーワードは「ビスフェノールA」(BPA)

「ビスフェノールA」(BPA)は、ペットボトル、食品、飲料の缶の内側に使用されている工業化学物質だ。
数多くある「環境ホルモン」の中でも、胎児の発達段階において曝露すると、ヒトに長期的に大きな影響を与え、様々な障害の原因になることが疑われてきた。ビスフェノールAに代表される工業用化学物質は、「現代社会の”3C”を支えるために、大量に使われている」と佐二木先生は指摘する。

”3C”とは、(1)Clean Life、(2)Convinient、(3)Comfortable の3つで、
「清潔」、「便利」、「快適」と、まさに毎日コマーシャルで植えつけられている価値観そのものだ。
この”3C”を目的に、「発がん性物質」、「変異原性物質」、「環境ホルモン」がその存在をいつまでも大目に見られているわけだ。

米国食品医薬品庁(FDA)の最新の声明

今回のトピックとしては、米国FDA(食品安全局)が、ビスフェノールAの安全性に関する新たな声明を発表したことだ。これまでFDAは、BPAの毒性についてさほど問題なしという立場にあったが、微妙な影響を調べる最新技術を用いたプロジェクトの結果、米国国立保健研究所の「国家毒性プログラム」とFDAは、慎重な言い回しながら「胎児、乳児、子どもの脳、行動、前立腺にビスフェノールAの悪影響は小さいながらもある」と懸念を表明したのだ。(2010年1月15日 FDA)

佐二木先生をはじめ、研究者、教育関係者の間では、近年のADHAなど子どもの情緒・知的障害の増加の背景に、内分泌撹乱物質の影響が指摘され、警鐘が鳴らされ続けてきた。
今回のFDA声明は、遅すぎるといいたいところだろう。

ペットボトルの危ないナンバーは「3」、「6」、「7」

佐二木先生は、BPAのリスクの身近な例として、ペットボトルをあげてくれた。
ペットボトルをよく見ると、三角に囲まれた記号があるはずだ。中には、1から6までの数字が記されている。
これは、化学物質の材質を表しており、プレママ、子どもにとって避けなければならない数字は、「3」、「6」、「7」だ。
これらのペットボトルやプラスチック容器は、ビスフェノールAが溶け出す可能性が高い。

ただ、日本国内のペットボトルでは、まず該当するものは使用されていないので、まず心配する必要はない。それでも、佐二木先生は、軽量で外出時に人気のポリカーボネート製の哺乳瓶を使う場合は、「使用するなら熱湯を注がないで欲しい」とリスク軽減に配慮することをすすめている。

どうやって対抗策を講じるか

それにしても、プラスチックだらけの毎日で、いったいどう対処すればよいのか。
佐二木先生は、いくつかの原則、コツを知って生活すれば、リスクを減らすことができるという。
簡単なことばかりなので、下記にピックアップする。

(1)食べ物を入れるプラスチック製品に熱湯を注がない

(2)キズがついたプラスチック製品は使用しない

(3)缶詰をそのまま加熱しない。別の容器に入れて加熱する

(4)絵本にもBPAが含まれるものがあるので、乳幼児がなめないようにする

(5)揚げ物をのせるキッチンペーパーがわりに、印刷物を使わない

どれも、熱で溶け出すビスフェノールAの特性を考えてのことだ。
ちょっとした配慮で、胎児、子どもたちの曝露量を減らすことができるので覚えておきたい。
ちなみに、大人については、ビスフェノールAに成人が曝露しても体内における化学物質の分解能力が未発達である子どもに比べると、影響は少ないとのこと。しかし、内分泌撹乱物質がなかった時代に比べれば、脳をはじめ、各器官に対して一定の作用を及ぼしている疑いは残る。

”Re-Think、Re-Design”

いったいどこまで”3C”を追い求めるのか。
「便利はこのへんでいい。面倒でもここはこうする」という割り切り、身の回りの常識を洗い直すのもいい。
高価だが味わいのある漆塗りの弁当箱、自然素材のザル、カゴが最近人気だ。
暮らしのどこにコストをかけるのか?
ビスフェノールAをきっかけに、そんな”Re-Think、Re-Design”を楽しみたい。