クリスマスシュトーレンに込められた豊穣への祈り
ドイツのクリスマスには、クッキーと共にシュトーレンが欠かせません。10月から早々と焼き上げる家庭もあります。洋酒と油脂、ドライフルーツを ふんだんに使うシュトーレンは、日持ちすることはもちろんですが、数週間熟成させたほうが、まろやかな風味になり、おいしさが増します。
ドイツのクリスマス休暇は、12月24日ごろからはじまり、「東方の三賢王の礼拝日」である1月6日ごろに終わりますが、実は人々の暮らしでは、 キリストの降誕祭の4週間前から、“アドヴェント”=「待降節」といわれる前段階がすでにはじまっています。クリスマスは一日で終わりではなく、 それはそれは長い特別な期間なのです。
家族揃ってクリスマスの日を迎え、手をつけずに寝かせていたシュトーレンを切り分けて食べる。日本の正月におせちやお餅を食べるように、深く根付いた文化です。
意外なことは、ドイツ家庭ではクリスマスの日にお墓参りにいくということ。これは、キリスト教浸透以前の古代からの「冬至の頃に、先祖を祭り、翌年の豊かな収穫を祈る」という習慣が変わらずに継承された姿だそうです。 シュトーレンの中にみっちりドライフルーツを入れるのは、やはり収穫を感謝し、翌年の豊穣を願ってのことだと言い伝えられています。
材料と製法にこだわるポタジェララのクリスマスシュトーレン
ポタジェララのシュトーレンの小麦粉は100%国内産。信頼できる国内産の小麦粉はやはり貴重な存在で、単価は輸入小麦粉の2倍するそうです。オーガニックのドライフルーツ、甜菜(てんさい)砂糖、放し飼いの有精卵などの材料を使い、天然酵母菌でじっくりと発酵させてから焼き上げます。さらに、アプリコットジャム、フォンダン、粉砂糖の3段重ねで仕上げ、熟成を待つのです。
(1) ミンスフルーツ mince fruits
ポタジェララのシュトーレンづくりは、ドライフルーツの洋酒漬け(ブランデー、赤ワイン使用)=ミンスフルーツからはじまります。ここでいう“ミンス”とは、細かく刻む、メンチ状にするという意味で、ドライフルーツを刻み洋酒漬けにしたものを指します。小麦粉の量に対して80%に及ぶフルーツ類、同じく30%という植物性油脂がシュトーレンの由緒ある重さを成します。
(2) クランベリー
赤い実が美しいクランベリーは、ビタミンCが豊富。泌尿器系の症状に効用があるとされています。
(3) ブルーベリー
ブルーベリーは、アントシアニン色素の効用への期待や、豊なミネラル成分、抗酸化力の高さで近年注目されています。
(4) くるみ
良質な脂肪分とミネラルが豊富なくるみは、完全食といわれるほど必須栄養素に富んでいます。
(5) ブラックカランツ
別名カシス。ビタミンC、カリウム、タンニン、アントシアニン色素など人に活力を与える栄養素を豊富に含みます。
(6) オレンジピール
オレンジの皮の精油は抗菌力を持ち、成分のひとつであるリモネンには血行促進作用があります。胃腸の機能を高めてくれる貴重な材料でもあります。
(7) レーズン
果糖・ブドウ糖はもちろんのこと、カリウムが豊富で、他にカルシウム、鉄、亜鉛、銅などの必須ミネラルも含みます。
(8) いちじく
いちじくの実には果糖、ブドウ糖、蛋白質、ビタミン類、カリウム、カルシウム、ペクチンなどが豊富に含まれています。
ポタジェララ
小田原市にある天然酵母パンとオーガニックカフェの店。店主の小澤ちひろさんは、「あなたと健康社」の料理教室でアシスタントを務めた経験もあり、自然食に通じています。実家である三島市の菓子店「パティスリー・ララ」で20年間以上前から作られているシュトーレンの製造法と経験を受け継いでいるのが、ポタジェララのシュトーレンです。
クリスマスシュトーレン
(大)3,000円/(小)2,000円/(プチ)550円
取材協力/天然酵母パンとオーガニックカフェ「ポタジェララ」